粉塵の中、DPの一瞬の混乱に乗じて背後に回る。
動きは身軽な私の方が速かった。DPの攻撃を少しでも止める演出が必要だった。
【DP】
「にゃっ……」
【姫菜】
「……案外、一本気なパワータイプなのね。
猫言葉なだけあって、猫騙しに弱いんじゃない?」
DPの後頭部に押し付ける銃口。
こんなヤツの肉を裂くのに愛用の刀を使いたくない。
銃を選んで正解だったわ。
【DP】
「にゅ……にゅぅう……小賢しい手を使うにゅっ」
【姫菜】
「勝ちは勝ちよ。この状況、誰が見たってチェックメイトでしょ?」
【DP】
「うにゃっ……」
銃口で軽くDPの後頭部を小突く。
僅かによろめいたDPに、周囲で見物していたスレイヤーたちが秘かに嗤う。
その反応に、私は自分がますます高揚して行くのを覚えた。
ずっと叩きのめしてやりたいと思っていたこの男を大勢のギャラリーの前で
痛めつけている。その状況が、私をかなりの興奮状態に仕立て上げていた。
「見ろよ……Saintsも大したことねえな」
「自分から仕掛けたくせに、負けてりゃ世話ねえや」
さざ波のように広がるSaintsへの嘲笑。
失墜したSaintsの権威。
DPは怒りか恥辱か、真っ赤になってわなわなと震えている。
【DP】
「にゅ……にゅっ……にゅううっ……」
【姫菜】
「……可哀想ね、アンタ。slaveなんかに負けちゃってさ」
以前からSaintsの権力を振りかざし、
slaveとNON―HUMANをゴミのように扱って来たDP。
その下らない幼稚なプライドを、今こそ踏みつけてやる。
そのとき、唐突にDPが笑った。
【DP】
「にゅっふっふ……」
【姫菜】
「……何よ。もしかして完全にイカレた?」
【DP】
「……姫タン、もしかしてボクに勝ったと思ってるにゃぁ?」
【姫菜】
「あら、違うの? このままぶっ放してもいいのかしら」
【DP】
「その前に、姫タンのこと、一瞬でボクは殺せるにゃ」
クスクス笑いながら、銃を押し当てられていることなど、ものともしない様子のDP。
【DP】
「……お気の毒にゃぁ。
姫タンはSaints幹部に逆らったslaveがどうなるか知ってるのかにゃぁ?」
【姫菜】
「……え……」
──まさか。
ドクンッと心臓が跳ね上がる。
まさか、まさか……
【DP】
「処刑するッッ!! お前の中のナノマシンを、作動させてやるにゃぁあっっ!!」