ギャラリー
 

CG
其の壱 其の弐

――きれいな子だな、と思った。

さらさらと流れるような黒髪。
その髪を、頭の2か所で束ねている。

透き通るような色白の肌。
小作りな顔に、黒く濡れたような輝きを放つ瞳――。

まるで、妖精のようだと思った。
いや、妖精そのものだと思った。

彼女は。
その少女は、葛葉神社の境内の、地面に屈みこんで。
白い紙を、しきりにいじくり、もてあそんでいた。

紙は。
彼女の手の中で折られ、たたまれ、形を変えてゆき。

ついにそれは、ある生き物の形を模したものになった。

…………数羽の、小鳥たちに。

その、小鳥たちは――――
パタパタと羽ばたきながら、彼女の周囲を飛び回りはじめた。
あたかも、本当の生命を与えられたかのようにして。

小鳥たちはしばらくのあいだ少女の周りを飛んでいたが、やがて。
少女が差し出した手や、その肩先にふわりと舞い下りた。
身を小刻みに震わせながら、疲れた羽を休めている。

【綺來】
 「うふふ……だめよ、まだ遠くへは飛べないんだから……ね? いいわね」

そういって、指先に止まった小鳥の嘴(くちばし)をちょんちょん、とつつく。
小鳥はそれに応えるようにして、ピー、ピー、とカン高い鳴き声を立てた。

――本物だ。
本物の小鳥みたいだ。

うわ。
すっげぇ。

胸が高鳴った。
いったい、なにがどうなってるんだよ!?
目を丸くした俺は。
それまで隠れていた木の陰から、一歩踏み出していた。

【司颯】
 「すっげー! お前、すげぇコトできるんだなっ!」

内心の驚きを、感嘆の吐息とともに吐き出す。

【綺來】
 「……っ………………!?」

瞬間。
少女は、びくん、と身をすくませた。
なにか恐ろしいモノに出くわしたかのように、
大きな瞳がまじまじと俺を見つめている。
紙の小鳥たちは、少女の硬直に反応して、ふたたび宙に舞いあがってしまった。

俺も、自分自身をどうフォローしていいかわからず、
棒を飲んだように突っ立っていた。
が、ややあって、ようやく気がついて。

【司颯】
 「あ、ははは……わりぃ、びっくりさせちまったな」

後頭部に手をやり、ぼりぼり掻いた。
照れ隠しの笑いを浮かべてみせる。
そんな俺を見て、少女は――――

【綺來】
 「ふふっ」

微笑みを返した。