振り返るとそこに広がっていたのは、現実とは思えない実に幻想的な光景だった。
黒い大刀を持った少女が、次々とギャングの若者たちを斬り捨てて行く。
大刀の刃は若者たちに決して触れることはない。
いつも必ず空を斬っているにもかかわらず、斬られた若者たちはみな、
魔法にかかったかのように倒れてゆく。
少女の大刀捌きはまるで舞のように幽玄で、ひとつの無駄もないように思えた。
【WSギャング】
「ぐ、ぐわああああ──っ!!」
最後の一人を横殴りに斬り落とし、WS(ホワイトストーン)のメンバーは
リーダー以外全滅した。
【WSリーダー】
「ひっ、ひいいいいっ!!」
先ほどまでの威勢の良さなどどこかに失せたリーダーが涙と洟で
顔をぐしょぐしょにしながら少女に向かって土下座を繰り返す。
【WSリーダー】
リーダーの必死の命乞いも聞こえていないかのように
少女は無表情のまま大刀を振り下ろした。
【WSリーダー】
「ひぎゃあああああ──っ?!」
醜い断末魔の叫びとともに、WSギャングのリーダーは泡を吹いて倒れた。
WSギャングの若者たちが斬り捨てられるのを見て、すっかりパニックに
陥ったBL(ブラックリバー)ギャングの若者たちが路地から逃げ出そうと
出口に殺到する。
【BLギャングA】
「──た、助けてくれぇぇっ!」
【BLギャングB】
「──俺ぁまだ死にたくねぇぇっ!」
しかし彼らはみな、まるで見えない壁に行く手を阻まれるように弾き飛ばされ、
誰ひとりこの惨劇の場から脱出することが出来なかった。
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