どこか妖艶で冷たい視線の女性がひとり、蒼い月を背にたたずんでいた。
長い黒髪を風になびかせる姿が凛然として美しい。
その、顔は…………
【司颯】
「か……華原……先輩……?」
茫然となった。
なぜだ?
なぜ、華原先輩が……俺の部屋の……窓の外に……?
いや、はたして彼女は華原先輩なのか?
いつも学校でニコニコとしている先輩の表情は、そこにはなかった。
【???】
「……邪魔したかしら?……」
華原先輩――の顔をした女性は、手に弓のようなものを持っていた。
――あの弓で、水の『矢』を射たのだろうか?
だが……その弓は、実用になるとは思えなかった。
弦が張ってなかったからだ。
【司颯】
「あんた……先輩じゃないのか? だれだ!?」
【???】
「―――私は、北辺の玄武神に仕える巫女、水菜」
【司颯】
「え……み、水菜……?」
バカな。
どう見たって華原先輩じゃないか…!
いや……本当にそうだろうか……?
水菜と名乗った彼女の冷ややかな表情は、確かに華原先輩とは別人のものだ。
【水菜】
水菜は、格下の者をとがめるような口調でいった。
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