中庭へ来ると、大きな木の下で綺來が幹にもたれかかってるのが見えた。
――あー、あいつ、また昼寝してるんだな。
毎朝きちんと起きたり勉強したり――と、
慣れない学校生活がはじまって、疲れてるんだろうな。
そう思いながら、俺は木の方へ近づいていった。
おっと……。
立ち止まり、おそるおそる頭上を見る。
一昨日だったか、うっかり確認せずに木の下へ来たら、毛虫が降ってきやがった。
あの時の再現だけは御免だからな……。
――とりあえず、毛虫はいないようだ。
綺來のそばへ行き、声をかけた。
【司颯】
「綺來〜?……また、こんなとこで寝てんのかよ」
綺來が、すっと目を開ける。
まだ眠そうだ。
ほゎゎん、とした表情をしてる。
……まあ、いつものことだけどな。
【綺來】
口調まで、ほゎほゎ〜んとしてる。
まだ、きちっと目覚めてはいないんだろうな。
【綺來】
たはは、じゃねーだろ、ったく……。
なんてことをいってるうちに、綺來の瞼がまた半分くらい、すーっと降りてきた。
おいおい、この上まだ眠るつもりかよ。
【司颯】
「お前……お務め中にも寝てんのかよ……」
なんとも綺來らしいと思いつつ、とりあえずツッコミを入れておく。
しかし……そんなに居眠りこいてたら、あのばあさん連中に
どれだけ怒られることか……。
それでも眠ってしまうんだから、綺來も神経が太いというかなんというか
……意外に根性すわってるんじゃなかろうか。
【司颯】
「ま、いいけどさ。じゃ、俺も……」
綺來の隣に腰を下ろす。
芝生は陽光に照らされて、ほんのりとぬくみを帯びていた。
【司颯】
「もう、だいぶあったかくなってきたな」
【綺來】
「うん……そだね」
綺來は、またウトウトしはじめる。
しょうがないやつだな。
うっかり寝すごして午後の授業に遅れても知らねえぞ。
などと思ってはみたものの、綺來をひとりで放置しておくわけにも行かない。
なので、ついつい寝顔を見守ってしまう。
……綺來には、そういうところがある。
ついつい見守ってしまいたくなるような。
そばについていて、保護してやらなくちゃいけないような。
そんな気持ちをかき立てる――なにかが。
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