ギャラリー
 

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其の壱  其の弐  其の参

中庭へ来ると、大きな木の下で綺來が幹にもたれかかってるのが見えた。

――あー、あいつ、また昼寝してるんだな。
毎朝きちんと起きたり勉強したり――と、
慣れない学校生活がはじまって、疲れてるんだろうな。
そう思いながら、俺は木の方へ近づいていった。

おっと……。
立ち止まり、おそるおそる頭上を見る。

一昨日だったか、うっかり確認せずに木の下へ来たら、毛虫が降ってきやがった。
あの時の再現だけは御免だからな……。

――とりあえず、毛虫はいないようだ。

綺來のそばへ行き、声をかけた。

【司颯】
 「綺來〜?……また、こんなとこで寝てんのかよ」

綺來が、すっと目を開ける。
まだ眠そうだ。
ほゎゎん、とした表情をしてる。

……まあ、いつものことだけどな。

【綺來】
  「んー。うん……なーんか最近、眠くって……お日様が気持ちいいでしょ、
だからつい……ウトウトしちゃうのよねー」

口調まで、ほゎほゎ〜んとしてる。
まだ、きちっと目覚めてはいないんだろうな。

【綺來】
  「昼寝はもともと大好きだから〜、桔梗神社のお務めの最中も
よく居眠りして怒られちゃうのよねぇ……たははは」

たはは、じゃねーだろ、ったく……。

なんてことをいってるうちに、綺來の瞼がまた半分くらい、すーっと降りてきた。
おいおい、この上まだ眠るつもりかよ。

【司颯】
 「お前……お務め中にも寝てんのかよ……」

なんとも綺來らしいと思いつつ、とりあえずツッコミを入れておく。
しかし……そんなに居眠りこいてたら、あのばあさん連中に
どれだけ怒られることか……。
それでも眠ってしまうんだから、綺來も神経が太いというかなんというか
……意外に根性すわってるんじゃなかろうか。

【司颯】
 「ま、いいけどさ。じゃ、俺も……」

綺來の隣に腰を下ろす。
芝生は陽光に照らされて、ほんのりとぬくみを帯びていた。

【司颯】
 「もう、だいぶあったかくなってきたな」

【綺來】
 「うん……そだね」

綺來は、またウトウトしはじめる。
しょうがないやつだな。
うっかり寝すごして午後の授業に遅れても知らねえぞ。

などと思ってはみたものの、綺來をひとりで放置しておくわけにも行かない。
なので、ついつい寝顔を見守ってしまう。

……綺來には、そういうところがある。
ついつい見守ってしまいたくなるような。
そばについていて、保護してやらなくちゃいけないような。
そんな気持ちをかき立てる――なにかが。