【綾乃】
「あ、これですね〜。ふふふ」
華原先輩は、ちょっと照れくさそうに笑った。
薔薇の蕾がほころんだかのように、華やいだ雰囲気があたりに漂う。
【綾乃】
うっすらと頬を染めている。
その表情が、なんだかひどく初々しくて、とてもひとつ年上とは思えない。
【司颯】
「あー……いやいや、そんなことないですよ、似合ってる。 うん、ばっちりです」
【綺來】
「うん。かっこいいですよ先輩っ」
【綾乃】
【司颯】
「ご用というほどでもないので、また来ます」
しゅたっと左手をあげ、クルリと踵を返そうとしたのだが。
綺來が慌ててベルトをつかむ。
【綺來】
【司颯】
「大丈夫だって、さっきもいったろ。これくらいすぐ治るさ」
【綺來】
「むー、死んだら、わたしのせいになるでしょ!」
【司颯】
「死ぬかっつーの……」
【綾乃】
「あの……お怪我でもされたのですか?」
俺と綺來のやりとりを見守っていた華原先輩が尋ねてきた。
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