世界は、現実に優しく、理想に厳しい。
結局ここは現実で、それ以上へは望むべきではないと、知らされてしまうのだ。
どこまで行こうとも、結局は落ち着く場所へと落ち着かされる。
それが妥協だと、人は言う。
それが利口だと、人は言う。
それが立派だと、人は言う。
それが大人だと、大人は言う。
……だが。
求めことは、そんなに悪いことなのか。
理想を求めては、いけないのだろうか。
それの何が悪い?
何が悪いというのだ?
夢を見ていて、何が悪いというのだ?
上を見るには、理想を語るべきだ。
前を向くには、幻想を語るべきだ。
たとえ夢物語だとしても、語らなければ物語にもならない。
それは、許されないことなのか。
理想は、語ってもいけないのだろうか。
【???】
「……駄目じゃないと思うよ」
突然、そんな声が聞こえた。
瞬間、ぞくりとした。
背筋が、一気に凍ったような感覚。
体感温度が、急激に下がったような気がする。
寒気にも似た、悪寒。
悪寒にも似た、予感。
【???】
「理想、それはどんな想いをも翼に代えて、
夢という目標へと向かって羽ばたける魔法の言葉」
【???】
「現実、それはどんな想いをも銃に添えて、
今という場所へと向かって射ち落とす悪魔の言葉」
謳うように歌い、騙るように語り。
抽象的で、写実的で。
熱っぽい氷に触れながら、冷たい炎を感じているような。
現実なのか、幻想なのか。
その区別が付かない、不思議な言葉。
ただ、確実なことは。
とても、嫌な感じがするということだけ
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