ジリリリリリ。
【夏希】
「ん……」
耳元からの、けたたましい音によって、心地よい眠りを妨げられる。
【夏希】
「んん〜……」
この雑音が鳴っているということは、
起きなくてはならないという合図。
だが、それでも抵抗したくなるのが人間というもの。
パシンッ。
やかましい音がぱたりと消える。
所詮は、文明の利器。
それを開発した人間には、勝てはしないのだ。
【夏希】
「おそれいったか〜……むにゃむにゃ」
……。
……。
……がちゃ。
【夏希】
「……(すやすや)」
【春奈】
「……」
……。
ガンガンガンガンッ!
【夏希】
「どわあっ!」
【春奈】
「朝だよ〜! おきろ〜!」
【夏希】
「な、なんだなんだあ!」
【春奈】
「あ、起きた」
眼を開け、僕の身に何が起こったのかを確認する。
そこには、おたまとフライパンを手に無邪気に笑う妹の姿があった。
……騒音の原因はこれか。
【春奈】
「おはよ、お兄ちゃん。気持ち良い朝だよっ!」
春奈の晴々とした笑顔に、誰もが心を和ませることだろう。
だが、僕に至ってはその例外に当たるようだ。
【夏希】
「……春奈」
【春奈】
「え、なに、お兄ちゃん?」
【夏希】
「……おやすみ」
ぱたんっ
【春奈】
「え、ちょっとお兄ちゃん! 何でまた寝るの!?」
【夏希】
「何故眠るのか、それはそこに眠気があるから〜……」
【春奈】
「訳分かんないよ〜!」
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