その先に居たのは、漆黒の髪に褐色の肌を持った少女だった。
どこかの民族衣装のような服を身に纏い、エキゾチックな雰囲気に包まれている。
全てが一体で、まるで一枚の絵のようだ。
【夏希】
「……なにしているの、あの子」
正宗
「まあ、占いだろうな。きっと」
正宗の答えは、僕の見解とまるで変わらなかった。
褐色の少女は、台の上に置かれている水晶玉をじっと見つめている。
それを挟んで、占い客の男女が緊張した面持ちで座っている。
【夏希】
「……ていうか、今時水晶玉の占いってあるんだ」
【七深】
「うん……珍しいよね」
【正宗】
「まあ、けっこうレアだけどな」
僕らは褐色の少女を前にして、口々に感想を言う。
【ナディア】
「……はい、出ました」
少女の口から、とても穏やかで流暢な日本語が紡がれる。
【ナディア】
「お二人の未来は……とても明るいものとなるでしょう」
【ナディア】
「ですが二年後、彼のほうにある危機が訪れます」
【ナディア】
「それが何なのかは分かりませんが……、
それが、お二人にとって最大の障害となるでしょう」
少女の言葉は一つ一つが丁寧で、
男女は緊張した面持ちでその言葉を聞いている。
【ナディア】
「ですが心配することはありません。強い信念を持って、
その障害を二人で乗り越えることです」
【ナディア】
「そうすれば、その先は前途洋々たる道が待っています。
お互いを信じ、共に助け合って生きていくことが肝要でしょう」
【男A】
「はい、分かりました」
【女A】
「ありがとうございました」
【ナディア】
「いえ、お二人の未来に光と希望があることを祈っています」
男女は立ち上がって、そのまま人混みの中へと消えていった。
【ナディア】
「ふう……」
少女は一息つき、緊張していた表情を和らげた。
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