【皇ヶ崎】
 「おっ……」


作戦の反省会だろうか――
ちぐさが何人かの隊員を立たせて説教している。
直立している隊員は無言でじっと口を固く結び、ちぐさの言葉を待っているようだ。
峻厳な空気がただよっていた。

【皇ヶ崎】
 (何だか、ちぐさは鬼教官のようだな……立派な厳しい教官……
  どちらかというと女王様か。どちらにしても厳しそうだな……)


興味がわいた俺は、しばらく物陰から様子を見守ることにした。

【ちぐさ】
 「貴様がなぜここに立たされているか、わかっているだろうな?」

【隊員A】
 「はっ。作戦時、突入のタイミングが3秒遅れたからであります!」


【ちぐさ】
 「そうだ。それが余計な隙を招き、敵に反撃の余裕さえ与えかねないことになった」


何度か鳴り響く乾いた音は、ちぐさが手の中の鞭を中空で振っているからだろう――
それが隊員の恐怖を更に煽っている。

【ちぐさ】
 「貴様は、我が隊を一瞬の危機に陥らせる状況を作ったのだ。わかるか?」

【隊員A】
 「はっ!!十分に承知しております!!申し訳ありませんでした!!」


【ちぐさ】
 「ぬるい!!」

【ちぐさ】
 「その甘さが、我が隊を危機に晒すことを決して忘れるな!!」

【隊員A】
 「はっ!」


【ちぐさ】
 「貴様のような存在はクズだ」

【隊員A】
 「はっ!」


【ちぐさ】
 「そうだ。命令一つ守れないクズだ」

【ちぐさ】
 「復唱」

【隊員A】
 「はっ!私は隊長の命令にさえ従えない役立たずのクズであります!!」


直立不動で答える隊員の表情は青ざめ、泣きそうな声になっている。
喉下には、ちぐさが手に持つ鞭の先が食い込むぐらいに当てられ、
隊員の顎を上ずらせている。

【皇ヶ崎】
 (それは、ちょっと、やりすぎじゃないか?)


俺の心配をよそに、ちぐさの説教は更に続いた。

【ちぐさ】
 「では、罰を与える。わかっているな?」

【隊員A】
 「はっ。承知しております!!」


【ちぐさ】
 「では、急いで準備しろ。10秒だ」

【隊員A】
 「はっ!!」

隊員は、ちぐさに背を向けると、いきなりズボンを下ろし、
全員の見る前で尻をだして前かがみになった。

【皇ヶ崎】
 (な、なんだ?)


【隊員A】
 「準備できました!!伊勢一佐、よろしくお願いします!!」


【ちぐさ】
 「よぅし。よく出来た。では、遅れた3秒にちなみ、3回の尻打ちをする」


【皇ヶ崎】
 (おいおい……それはやりすぎじゃ……)