もういいだろう。
この怪物から被害をこうむるのは、もう終わりにしていいだろう。
失ったものの代わりに、得たものがある。
命を繋ぐ一方で、命を狩る武器をその身に宿した。
だから五度目は――――
西
「む…………?」
夢美の右腕が硬質化し、皮膚がメタリックブルーの輝きを放っていく。
室内の温度が急に冷えていき、空中に出来た氷のカケラが弾け飛んだ。
西
「これは…………」
西の顔に、ハッキリとした驚きが浮かぶ。
だが、それも無理はない。
『変化』という工程など殆ど感じさせないほどに、夢美の右腕は
そのもう一つの姿を作り出していたのだから……。
夢美
「うん……ここから始めよう…………」
口から言葉にして、蟲へと告げる。
夢美
「ここからが、私達の新しい始まりにしよう」
そうして、足を前に踏み出す。
今まで恐れることしかできなかった合蟲人間に対し、夢美が初めて自ら前に進み出た。
対して合蟲人間も腰を落として構えを取ると、床を蹴って夢美に襲い掛かって来た。
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