人形を掴んでいるアームに念じながら、俺は祈るよう
な体勢で見守る。
公博
「……」
かぐや
「……」
人形がダストに近づくにつれて、緊張感が高まる。
心なしか有馬さんの表情からも、それらしいものが見
て取れる。
公博
「頼む、頼むぞゲーセンの神……」
これで落としでもしたら一生恨むからな!
公博
「……」
もう少し……あと……5センチ……。
公博
「……やった」
アームが稼動を完全に停止して、残された唯一の作業
であるシュートを決めた時に、やっと緊張感から解放
された。
排出口に人形が落ちてくる。
俺はそれを引っ張り出して、有馬さんに手渡した。
公博
「はいこれ。……ちょっと、てこずっちゃったけど」
1発で取れれば格好良かったんだけどなあ。
かぐや
「……」
相変わらずというか、無言のまま有馬さんは受け取っ
た人形を大事そうに抱える。
俺はその仕草を見れただけで苦労が報われた気がした。
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