公博
「……よし。では、頂こうか」

箸を右手に持ち、弁当箱を左手で抱えながら、おかず
に箸を伸ばす。

公博
「まずは無難なとこから行くか」

俺は、黄色い玉子焼きを一切れ箸でつまむ。

やや焦げ目が目立つ以外は特に問題のない、普通の玉
子焼きだ。

公博
「味付けは、どうなってんのかな……っと」

ストレートに甘いのか、それとも薄味で味わうタイプ
か、どちらだろうかと考えながら、口の中に放り込んだ。

公博
「……ん?」

つむじ
「ど、どう?」

公博
「ん……ああ。ちょっと、珍しい味付けだったもんだ
から、戸惑っちゃったよ。個性的で良いと思うよ」

つむじ
「そ、そう……それは良かった」

なんとか誤魔化せたか……。

しかし、これはどういうことだろうか。まさか玉子焼
きで『辛い』が来るとは予想できなかった。

疑問に思うが、これもつむじの個性だろうと信じ、次
なる標的を見定める。

公博
「次は……」

つむじ
「じ〜」

すっごい見られてる。おかず一つ選ぶのにも、神経遣
うぜ……。

公博
「それじゃあこの、ミニハンバーグでも」

つむじ
「そ、それは、自信作だから! 美味しい、と、思う
よ……多分」

最後の多分、は聞き逃しておきたかった。

俺は、期待と不安を半信半疑しながらミニハンバーグ
を口へと運ぶ。

公博
「……んん?」

一番最初に感じたものは、『冷たい』だ。

時間がたって冷めたのとは違う冷たさ、つまり生。充
分に加熱されておさず中が冷たかったのだ。

つむじ
「ど、どうかな……?」

公博
「そうだな……」

絶妙な焼け具合で、表面だけが焼けており中身はその
ままなので血の味がする。

公博
「これもまた……んっ?!」