「あ……あの男に、取られてしまう……
わたしの、リネットさま……」
「愛しのリネット様が、遠くへ行ってしまう……
それは……それだけは、いや……」
「…………リネット、様……
りねっとさまぁ……」
彼女はまるで怯える少女のように身体を抱き、
幼げな口調で主の名を呼んだ。
不安で仕方のない彼女は今、
この城の完璧でクールなメイドではなかった。
今の彼女はただ、ありもしない不安に怯える、
寂しい女の子でしかない。
「リネット様……リネット様っ……」
「リネット様の声が聞きたい……
リネット様の笑顔が見たい……
リネット様に褒めて欲しい……」
「リネット様と一緒に、本を読みたい……
リネット様と一緒に庭を散歩したい……」
「リネット様に……絶対に私を棄てないと、
誓って欲しい…………」
涙声になりながら、アンは祈りを捧げるように
自らの願いを呟いた。
そして彼女は頭の中に、大好きな主人の顔を
思い浮かべようとした。
「あぁ……リネット様……
私は、貴方のもの……」
「だから……私の身体は、
リネット様のお気に召すまま……」