【姫島博士】
 「……だからさぁ、正直詰め込みすぎなのよね。 わかる?」


バーで席に着いてから数十分後。
俺の目の前にはすっかり出来上がって延々と愚痴をこぼす姫島博士の姿があった。

【姫島博士】
  「大体、上の決定だから、なんて言うけど心の中では私が女だからって
見下してかかってるのがミエミエなのよ。 マスター、おかわり」

カウンターの中のバーテンダーは既に慣れっこなのか、
黙って博士へと琥珀色の液体のつがれたグラスを指先で押し出した。

【姫島博士】
 「ありがと」


そう言うとグラスの中身を勢いよく呷る姫島博士。

【姫島博士】
  「男女の機会均等なんて言ったって、文科省も防衛省も、
男系社会であるのには変わりないのよ」

【姫島博士】
 「むしろ、防衛省の方がそんな色は強かったわ」

【姫島博士】
  「そりゃそうよね。いびつとは言っても軍事組織の技術畑なんて
女性が大手を振って歩ける場所じゃないんですもの」

【姫島博士】
  「挙げ句、オルロイ教授がソビエトからの亡命者だからって、
警務隊も情報保全隊も私をマークして貼り付いてきちゃって」

【姫島博士】
  「おまけに自衛隊に泡を食わせてやろうって言う魂胆が見え見えな公安まで!
……ま、別にこれはいいんだけどさ」

【姫島博士】
  「でも、結局は私の力を必要としてたのよね。
と言っても男社会はそれを素直にそのことを認められなくて……」

【姫島博士】
 「ほ〜んと、バカバカしいったらありゃしないわ」

【姫島博士】
  「それで要らない気苦労させられる身になってご覧なさいって言うのよ!
マスター、もう一杯!!」

博士の前に新しいグラスが差し出される。

【皇ヶ崎】
 「とは言え、今のTGSがあるのは間違いなく博士の功績だと思うが……?」

【皇ヶ崎】
 「少なくとも俺はそのことを認めているし、感謝だってしている」


俺はなだめるように言いながら、ぬるくなって
しまっている1杯目のラムを喉の奥へと流し込む。

【姫島博士】
  「ありがと。でもね、どこにいたって男共と来たら、そんなことはお構いなしっ! 
人が女だと思ったらニタニタいやらしい顔をして言い寄ってきて……」

【姫島博士】
  「男なんてみんな強姦魔よ! 女を力でねじ伏せる
ことに快楽を見出す野蛮人よ!」

【姫島博士】
  「そうじゃなかったら与しやすい少女にハアハアするロリコンか、
ニコニコ甘えさせてくれる母親から離れられないマザコンなのよ」

【皇ヶ崎】
 「……いや、少なくとも俺は違うぞ」