「わぁっ、すごいねっ!」

特急電車の席から、緑は感嘆の声を上げた。

既に走り始めてから一時間ほどか経過しており、
今は日田駅と天ヶ瀬駅の間を走っているところだった。

車窓から見える景色は、普段とは完全に別世界。

特に、久留米駅から日田駅の間で見える耳納山地には、
大きな感動を覚えたものだった。


「綺麗だね」

湊太
「うん、山にはよく行くけど、
 こんなふうにのんびり眺めたのは久しぶりだな」

窓の外の景色を眺めながら、湊太も嬉しそうな表情を浮かべていた。

日頃から、妖神鎮めや訓練に明け暮れている分、
こうした穏やかな時間は貴重なのかもしれない。

御静屋のことも、御子のことも、妖神のことも忘れて、
二人は特急電車の旅を楽しんでいた。


「湯布院、楽しみだなぁ」