少しずつ横に回り込んでいくような動きで、杏子の隙を窺っているようだった。

全身で巻き付こうとしているのか、それとも鋭い牙で噛み付こうとしているのか。

あるいは、それ以外の攻撃方法もあるのかもしれないが、緑には想像の及ばないところだった。


「梅枝さん……」

祈るような気持ちで、見つめることしかできない。

緑が何を言ったところで、おそらくは邪魔にしかならないだろう。

緑にできることは、杏子の勝利を信じることだけだった。

杏子
「――――――――――――――――――――――」

獣のように吼えて、杏子が妖神に立ち向かっていく。

大きく跳躍すると、妖神の頭部に爪を叩き込もうとした。