素早く体をを回転させるようにしながら、杏子の爪が妖神の鱗を引き裂いた。

海中に白いものが流れ出したが、それは血ではない。

妖神の中の穢れが、外側へと排出されている証だった。

杏子
「(ここで鎮めたら、穢れの回収が困難になる)」

杏子
「(この辺りで、浅瀬になってるところは……!)」

妖神との戦いは、ただ単に鎮めれば良いと言うものではない。

鎮めた瞬間には妖神体内の穢れが撒き散らされるため、
それを回収しなければ、再び妖神が生まれてしまう可能性があるのだ

地上での戦いならば、それほど気を遣う必要はないのだが、
海中での戦いにおいては一番の難題になることが多かった。

妖神を鎮めた後、穢れ――直接的に表現してしまえば、
ゴミを回収しやすいポイントで戦うことが、海を担当する御子の仕事だった。