マキ
「くは、あぁぁぁぁぁ!?
ひくっ、ひ、ひぁあぁあぁぁぁぁぁぁ!!」
恐怖と苦痛にもがくが、やはり、
恭一郎の腕から逃れるそぶりは見せない。
神経が集まっている顔面を引き裂かれる痛みが、
正常な判断力を失わせているのだろう。
――彼女は、何も分からぬまま、
気付く事もないまま――呆気なく、
そして無意味に、壊されるのだろうか。
マキ
「く、ぅぁあぁぁぁぁぁ!?
あぐ、ひ、痛い、痛い……っ!!
助けて、助けて……えぇぇぇえぇぇ!!」
そう叫んでも、誰かが駆け寄ってくる様子はない。
上に居るであろうトラの声すら響いて来ない、
助けを求めに、走り去った様子もない。
それに絶望し――瞼を強く閉じる。
――それでも刃は、容赦なく、
そして迷いすらなく皮膚を引き剥がしてゆく。
マキ
「あ、ぁあぁあぁぁあぁぁぁぁぁぁぁっ!?
いあっ、う、あぁあぁあぁぁぁ!!」
恭一郎
「僕には、女のような顔と、
髪はありませんからねぇ……。
まあ、お前で勘弁してやりますよ」
そうは言うが、マキが此処に来たのは、
彼にとって僥倖だった。
女性で在れば、誰でも構わなかったのは確かだが、
出来る事なら――鼎が心を預けている者が良い。
これもまた、選ばれているとの事実だろうと、
酷薄かつ、狂気に悦んだ嗤いを口許に浮かべる。